ほめパラ!

見たもの聞いたもの。好きな人たちのことを褒めたい人です。

最強のアマチュア・変ホ長調さんをライブで見ました。

2021年10月24日、変ホ長調が出演するライブ「漫才がとろけてる」を見に行ってきました。

ご存じのとおり、変ホ長調は、小田ひとみさんと彼方さとみさんの現役OLコンビで、M-1史上唯一のアマチュアファイナリストです。普段は会社員として働いておられて、賞レースの時期を中心に活動をされている方たちですので、生で見られる機会は本当に貴重なのです。これは何が何でも見に行かねば!と思い、少しだけ足を延ばして、大阪の玉造へ向かいました。

会場は、ライブ喫茶亀。今回のライブを主催された漫才師のヤングさんが経営されているスペースです。ヤング、にぼしいわし、変ホ長調ティーンズの4組が漫才を2本ずつ披露するライブ*1。キャパ25席ほどのこじんまりとした会場で、自分と他のお客さんの笑い声に包まれながら漫才を見る時間はとても贅沢に感じました。配信で東京のライブを気軽に見られるのもありがたいけど、やっぱり生で見るのがいいですね。

ライブ翌日、これを書いている今もずっと、昨日見た4組のネタのことを度々思い出しては、面白かったなぁといつまでも反芻しています。今日は朝から、月曜日の憂鬱が入り込む隙間がないくらいに心が満たされている感じでした。

阿佐ヶ谷姉妹を好きになったことがきっかけで、お笑いをそこそこ積極的に見始めたのが1年半ほど前、というお笑いファン歴がものすごく浅い私ですが、少しずつ、しかし確実に、お笑いへの愛は深まっている気はします。

そんなお笑いファンへの道をゆるゆると歩む中で、色んなお笑い芸人さんを好きと感じるようになってきた*2のですが、中でも、変ホ長調は、阿佐ヶ谷姉妹と同じく、同年代女性として心に響くものを、たくさん見せてくれるコンビだなぁと感じています。今回、ライブを見て、改めて、変ホ長調さん好きだな、と思ったので、そんな気持ちを書き留めておきたいと思います。

変ホ長調との出会い

2019年11月下旬。私が、阿佐ヶ谷姉妹のファンになった頃。過去のインタビュー記事などをWebで読み漁っていた時に、変ホ長調の名前を知りました。2010年開催の阿佐ヶ谷姉妹変ホ長調のツーマンライブ「大器晩成」の告知記事です。阿佐ヶ谷姉妹がフリーで活動されていた時期だと思います。お笑いナタリーで今読めるもので、阿佐ヶ谷姉妹に言及された最も古い記事になります。

natalie.mu

そしてこちらは、翌年2011年の「大器晩成2」の告知とインタビュー記事。今よりも少しだけお若い4人の姿も写真で拝見できますし、書き起こしスタイルなので、それぞれのお人柄も感じられて、とても好きな記事です。

変ホ長調・小田:お互いにお笑いをやる前から友だちで、一緒にバナナマンさんやラーメンズさんのライブを観に行ったりとか。「M-1グランプリ」の敗者復活戦を観に来てくれたりとか。みんなおしゃれコントに憧れてこんなことになってる感じで。

エリコ:合同コントするときも、最初は「東京03さんみたいなコントができたらいいね」なんて言っててね。

ここのところが特に好き。

また、2019年11月末頃はちょうど、変ホ長調が、M-1準々決勝で敗退し、準決勝のワイルドカード枠獲得を目指して、動画の再生回数を競っていたところでしたので、そこでネタを初めて見ることができました。

ネタの内容は、はっきりとは覚えていないのですが、とにかく、ゆったりとしたテンポに驚いたのは記憶に残っています。先のインタビュー記事を読んでいた時には、関西の方だし、なんとなくチャキチャキと早口で喋る感じの方たちなのかなぁと勝手に思っていた*3ので、お二人のふんわりとした雰囲気が意外で、とても印象に残りました。

マチュアというプロ~素を見せる~

阿佐ヶ谷姉妹の過去のお仕事を掘り起こすのが一段落した2020年2月くらいから、少しずつお笑い番組や動画を見るようになりました。アマゾンプライムで過去のM-1を見たのも、この頃だったと思います。変ホ長調は2006年のファイナリストです。www.amazon.co.jp

この記事を書くために、改めて動画を見たのですが、一応「お笑いファン」らしきものになってから見ると、なおさら面白く感じますね。

棒読みっぽいけど実は面白く感じる「間」があるのかもなぁとなんとなく思ったり。彼方さんが「お天気おねえさんかぁ・・・」と言った後の間が特に好きなんですよね。また、「野心家」「正規ルート」「踏み台」「自己評価高い」など、ワードの強さも印象的です。そして、渡鬼のくだりは、二人が言うこと全てが面白くて、共感と笑いがとまりません。

でも、面白いことを言おうとしている感じでもないんですよね。淡々と、ほとんど無表情でゆったりとした喋りを続けているのが、逆に面白く感じます。司会の今田耕司さんが「喫茶店でしゃべっているみたい」とコメントされていたのがまさにそれで、すごく自然なやりとりなのです。審査員の中田カウスさんが「アマチュアというプロやね」「太極拳を見ているよう」と評されていましたが、ゆったりとした喋りに、強面の審査員たちがバランスを崩されて、つい笑っている様子は、まさに太極拳だなと思いました。

最近、朝日新聞変ホ長調のインタビュー記事が掲載されました。

www.asahi.com

その中で彼方さんがこんなことを語っておられたのが、まさに「アマチュアというプロ」という感じでカッコいいなと思いました。

彼方 アマチュアである私たちができることって、素を出すことだけなんですよ。ここで、おもしろいこと言ったろ、と考えると、プロに負けるので。

人前に出るようなことをしていない私でも、日常の中で、つい、自分を大きく見せようとしたり、縮こまりすぎたりすることってあります。でも、背伸びせず、自分の素のままで闘うのが、結局、一番強くあれるのかもしれないですね。同年代女性が、力まず楽しそうに、好きなことに取り組んでいる姿はとても魅力的で、憧れてしまいます。

一方で、この「素」というのは、何にも考えずに「すっぴん」を見せているわけではないと思われるのもまた、面白く感じるところです。

2021年2月23日に開催された「ハルヨコイ~舞台人が作った短編映像を一緒に楽しむ一日限りの配信フェス」で、変ホ長調は、ちゃぶ台にお菓子を広げておしゃべりしている姿を、固定カメラで撮影した作品を配信されました。この配信後のZOOMでのトークパートで、司会の方かコメンテーターの方が「台本はあるんですか?」と質問されたのですが、これに小田さんが「無茶苦茶あります」と答えたのにはちょっと驚きました。漫才と違って、二人笑いあいながら、普通に楽しそうにお喋りしているように見えたので。

後になって、普通のお喋りにしては、やっぱり面白すぎるし、まぁ、台本あったのかな、なんて思い返したりもしましたが、とにかく、びっくりするくらい自然体でした。*4

変ホ長調Mー1ラストイヤーと「読む余熱」

昨年、2020年は、変ホ長調15年目のM-1ラストイヤーでした。

この動画、お二人、落ち着いていて、おだやかにお話されているのだけれど、こみ上げる感情を抑えつつ抑えきれない様子に思いの強さが感じられて、つい、もらい泣きしてしまいます。15年間、ご自分のペースで大好きな漫才を続けてこられたことが尊いし、同年代女性としては、そんな姿に夢や希望を感じます。

youtu.be

そして、この挑戦の真っただ中、変ホ長調のお二人が執筆された文章が、「読む余熱」という「お笑い・芸人・テレビを特集するコラム&レビュー誌」に掲載されました。

「VOLUME 0」は、コンビ結成秘話とアマチュア初のM-1決勝進出前夜について。「VOLUME 1」は、ファイナリストになった2006年のM-1のことと、ラストイヤーとなった2020年の挑戦について。あとがきに編集者の方が書かれているとおり「お二人だけの宝物のことを、たくさん教えてくださってありがとうございます。」という内容になっています。

変ホ長調の「M-1アナザーストーリー」

とても感動しました。

マチュアとして無欲で「向こう側」の世界に飛び込んで行ったお二人の見たこと聞いたこと感じたこと、そして少し傷ついたことが、とてもリアルに感じられて、朝の通勤電車で読みながらちょっと泣いてしまいました。

また、相方と交わす会話部分は、テキストになっても、変ホ長調のあのゆったりとした調子で脳内再生されて、クスっと笑えてしまいます。普段の会話の延長線上に、彼女たちの漫才があることが、なんとなく感じられる部分がたくさんありました。特に「決勝前に人前で漫才をした回数」をお二人で確認し合うくだりや、「変ホ長調さん思い出し待ち」の話が好きです。

こうして、お二人の文章に心を揺さぶられ、いつか生で変ホ長調の漫才を見てみたい!と思うようになったというのが、昨日の「漫才がとろけてる」を見に行った経緯になります。

変ホ長調の漫才は続く

面白いネタをしゃべりたい。そして面白いと思われたい。それが私たちのM-1 グランプリでした。私たちの M-1 グランプリは終わってしまったけれど、漫才が終わったわけではありません。続けていれば終わりではないのです。

「読む余熱VOLUME 1」より。彼方さんの言葉です。

この宣言通り、今年2021年も、変ホ長調の漫才は終わりませんでした!

女芸人NO.1決定戦THE Wにエントリーをされたのです。今のところ、THE Wには芸歴の制限はありませんので、これからも、変ホ長調の漫才は続いていくはずです。

M-1 グランプリ は、私達だけでなく、出演したみなさん、スタッフのみなさん、楽しみに見ているみなさんの青春なのだ。

「読む余熱VOLUME 1」の小田さんの言葉。

今、こうして、変ホ長調が漫才を続けている限り、この「青春」は終わりません。

「アマチュアというプロ」のエンターテイナーとして、これからも、私の現実とも地続きの、夢や希望を見せてくれることが、本当に楽しみです。彼女たちが続けてくれること自体に、同年代の私は、勇気をもらえるような気持ちになるし、見ていて元気になれるのです。

 

変ホ長調のお二人は、明後日10月27日から2日間、THE Wの準決勝に挑まれます。どうか、ご自分たちの漫才を、思い切り楽しんでくださいますように。そして、決勝で、お二人の漫才を見られますように。

*1:ヤングの1本目「殺害予告」は、嶋仲さんの話が、え?どうなるの?どうなるの?って聞き入ってしまう感じで展開がとても面白かったです。嶋仲さんのTwitterによると新ネタとのこと。2本目「業界用語」は夙川アトムだなぁと思いながら見てたら、とんでもない下ネタになっていって、もう全体的にバカバカしくて良かったです。にぼしいわしは2本とも面白かったけど2本目が特に好みでした。冒頭でいわしさんが、かなりためてからツッコんだところ、ちょっとドキドキしたのですが、予想もつかないような展開になったので大爆笑してしまいました。ネタ中の無言の時、にぼしさんが何とも言えない表情をされるのも面白くてたまらないです。変ホ長調は、1本目がWの2回戦でやったネタで、2本目がナルゲキでやったネタ。1本目は私がもう一度見たいと熱望していた小田さんがまた見られて感激でした。出てくるぼやきも全部最高だし、小田さんが思いつくこと、全部ちょっと可愛くて面白いw 2本目はナルゲキでやったネタを4分に圧縮していましたが、どこを切り取っても面白いんだなぁ、無敵じゃない?と思いました。終わり方は亀でやったやつの方が好みかも。ナルゲキの方は、え、一回で終わっちゃうの?終わらないで!もっと聞きたい!って思っちゃったので。

*2:2021年12月29日時点の特に好きな芸人さんを備忘録的にメモしておきます。阿佐ヶ谷姉妹変ホ長調。ザ・ギース。ラブレターズ。吉住。ヒコロヒー。Aマッソ。東京03。シソンヌ。さらば青春の光空気階段男性ブランコ。天才ピアニスト。にぼしいわし。

*3:私の周囲の関西人で「面白い」を自認してそうな人は大抵早口で捲し立てるような感じですし、常時ボケたりツッコんだり忙しそうですし、そのテンポについていけない私を「ここはこう返すやろ?」みたいにいじってきたりするので、日常の中でお笑いやろうとする関西人ってめんどくさいなぁという偏見を持っていましたが、お笑いをよく見るようになってからは、逆に、こんな風に感じることが減ってきたのは、我ながら面白い変化だなと思っています。てか、本当に面白い人は私の返しが下手でも勝手に面白くしゃべってると思うw

*4:ちなみに、10月17日のナルゲキプレミアムライブや昨日の漫才がとろけてるのMCで知ったのですが、変ホ長調、ネタだけじゃなくて、トークも無茶苦茶面白いんですよね。のほほんとした口調でボケるし叱るしいじるし、率先してふざけてみせたりもするし。やわらかい雰囲気だけれども、切れ味は抜群。本当に朗らかで面白いおねえさんたちです。