ほめパラ!

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阿佐ヶ谷お笑い数珠繋ぎ-3 阿佐ヶ谷姉妹→変ホ長調→にぼしいわし

※以前、別の場所で書いた記事を書き直して転載したものになります。

※これを最初に書いた2023年1月の熱量はなるべくそのままにできればという感じです。

2019年11月末に、阿佐ヶ谷姉妹のファンとなった私は、阿佐ヶ谷姉妹の情報を追いかける中で、自然と、様々なお笑い芸人さんを知り、様々なお笑いライブを見ることになりました。そして、次第に、お笑い自体に興味を持つようになりました。阿佐ヶ谷姉妹に導かれた道「だけ」を歩んだ、アラフィフ新規お笑いファンが、一体、どんなところに辿りつくのか、そんな道のりを記録してみようかと思います。

前回の記事はこちら。

asagayashimai-fan.hatenablog.com

2023年1月7日、Twitterにビッグニュースが流れました。

にぼしいわしが、変ホ長調阿佐ヶ谷姉妹をゲストとして招いて、大阪でライブを開催するというのです。

このニュースを最初に知った時には身体が震えるほど感動しました。

大好きな芸人さん3組が共演するだけでも嬉しいのに、お笑いファンとしての私の「生みの親」的な存在であり、好きで好きでたまらない阿佐ヶ谷姉妹が大阪に来てくれるとは!

新年早々に、大きなお年玉をいただいた気分になりました。

(フライヤーの、この味わい深いイラストも、とても好きです。)

この3組の芸人さんは、私が、特に熱心に見ている方たちなのですが、まさに、数珠繋ぎに、私をディープなお笑いの世界へ連れてきてくれた、特別な人たちでもあります。

今回は、そんな数珠繋ぎを、振り返ってみようと思います。

阿佐ヶ谷姉妹変ホ長調

変ホ長調は、2006年のM-1グランプリのファイナリストで、史上唯一のアマチュア決勝進出者です。

彼女たちは、阿佐ヶ谷姉妹が芸人になる前からのお友達で、阿佐ヶ谷姉妹がフリーで活動されていた2010年と2011年、そしてASH&Dに所属された後の2013年、この3回にわたって、ユニット「大器晩成」として、合同ライブを行ってきました。

そんな変ホ長調阿佐ヶ谷姉妹のご縁を知ってから、ずっと、変ホ長調は気になる存在でしたが、M-1ラストイヤーである2020年の年末に出版された電子書籍『読む余熱』に掲載された、お二人のコラムを読んで、そのお人柄に惹かれるようになりました。そして、彼女たちの漫才を生で見たいと思うようになり、大阪の小さな劇場で開催されるライブに、足を運ぶようになりました。

asagayashimai-fan.hatenablog.com

上記の記事を書いたのは2021年ですが、2022年の変ホ長調の活躍は、より一層アツかったです。

まず、アツかったのは、THE Wへの挑戦の道のりです。これは、個人的な思い出になってしまうかもしれませんが、変ホ長調が、ライブで新ネタを下ろすところから見ることができて、その後のライブで、少しずつ修正されて、より面白いものに磨き上げられていく過程を見られるという、とても興味深い経験をさせていただきました。

そんな過程を経ての戦い本番、大阪2回戦の1日目。私の体感では、変ホ長調がイチウケでした。これは準決勝に行った!と勝手に確信して感動したのを覚えています。M-1ファイナリストですから、面白いのは当たり前なのですが、それにしても貫禄がありました。

このときの新ネタは、2本とも、彼方さんの「おきゃん」で可愛らしい、何歳になっても女の子な感じが、非常に魅力的でした。そして、そんな「かなちゃん」に対する小田さんの、ふんわりとしたおとぼけ口調に毒を含んだ京都人らしい「たしなめ」の切れ味が見事で大好きでした。残念ながら、準決勝で敗退されてしまったのですが、変ホ長調さんのネタの進化を追いかける日々は本当にワクワクさせられましたし、私にとっては、大切な思い出です。

この年のネタの中で、特に、私が一番好きだったのが「師匠の立ち位置取りたがるよなぁ」という小田さんの台詞でした。私は、割と他人に上から来られることが多いのですが、そんなときに、この台詞を脳内で再生すると、偉そうにしている相手が、滑稽に見えてきて、モヤモヤした気持ちが和らぎます。

変ホ長調さんが、日々のちょっとした憤りやモヤモヤを笑いに変えて、チャーミングに悪口を言い続けている姿を見守ることで、私自身の日常も、少しずつ見え方が変わってきたように思います。共感と笑いが日々を彩ってくれています。

ネタや賞レース以外でも、2022年の変ホ長調は、非常にアツかったです。M-1史上唯一のアマチュアファイナリストである変ホ長調の物語が、様々なメディアで発表されたのです。レジェンド感が増し、改めて、すごい方たちだなぁという感想を持ちました。

まずは、2021年12月29日に発表された文春のインタビュー記事です。この内容は、『読む余熱』でご自身で書かれたコラムの内容とも一部重なりますが、インタビュアーが丁寧に掘り起こし語り直された部分も多くあり、非常に読み応えがありました。変ホ長調は実は4人組であるとか、小田さんが、R-1のセミファイナリストでもあるとか、新しく知ったこともありました。

bunshun.jp

そして、同じく文春で連載されていた笑い飯を軸に、様々な芸人さんのインタビューから構成されたノンフィクション『笑い神』にも登場。全編、古き良き男臭いバトル漫画を見ているような気持ちになるこの書籍の中で、変ホ長調さんの章だけはホッとさせられるものになっています。2006のM-1のDVDの特典映像でも、楽屋で過ごす変ホ長調のお二人の様子が収録されていましたが、お弁当をケータイのカメラで撮影して微笑んでいる姿は、戦場の中で、そこだけ穏やかなあたたかい空気が流れているようでした。

一方で、『読む余熱』の中では遠回しに書かれていた「傷ついたこと」についても一歩踏み込んで書かれていて、やっぱり、そこは戦場なんだなとも思わされました。ラジオで「強い人」にネガティヴな評価を言われるというのはなかなかキツいことです。でも、当時はまだSNSが普及する前でしたから、まだ良かったのかもしれません。あと、彼方さんが2023年2月末のカモシダせぶんさん主催のビブリオバトルでこの本を紹介された時に、傷ついたことについて、「謝ってもらおうと思ってる!」と仰っていたのが、漫才中の「かなちゃん」のニンそのままな感じで、素敵だなと思いました。阿佐ヶ谷姉妹にも通じることですが、お姉さんたちの、この芯の強さを感じるところも、好きなところなのです。

それにしても、笑いの評価というのは本当に難しいと思います。博多大吉さんが昨年末にラジオでM-1の審査について、自分の中で明確な基準を設けて採点したというお話をされていました。会場ウケなどを見て迷いが生じても、最後まで決めた基準を貫いたとのことです。過去の審査の傾向や自分の役割等を緻密に分析された上で基準を設定するというプロの仕事の凄みを垣間見た気持ちになりました。自分の一言がその芸人さんの人生を左右してしまうかもしれない。そんな重責に対して真摯に向き合われている姿に胸が熱くなりました。ほとんど公職であるかのように、大衆から説明責任を果たすことが求められていて、審査員のみなさんも芸人で、ふざけるのがお仕事なのに、本当に大変だなと思います。

話がずれました。

この年の変ホ長調さんの活躍の話でした。

2022年11月には、『M-1 グランプリ』のスピンオフ企画として『アマチュアたちの M-1 グランプリ』というラジオ番組が放送されました。前半は実話を元に、変ホ長調の結成からM-1の決勝戦までをラジオドラマに。後半は変ホ長調さんご自身がスタジオでMCの東野幸治さんとトークを繰り広げるという構成。トークパートも貫禄でした。今もライブの平場でよく無双してますが、このラジオもめちゃくちゃ面白かったです。小田さん、東野さんを「持ち味消えてますよ〜」なんていじったりして、「アマチュアというプロ」は健在でした。

ラジオドラマは、彼方さんを松本若菜さん、小田さんを南海キャンディーズしずちゃんが演じました。ドラマ中で、実際の音声で本物の変ホ長調の漫才が流れたと言うのも貴重でした。AmazonプライムM-1を見るとわかるのですが、変ホ長調の漫才、ピー音ばかりで、見ている者の想像力が試されるのです。私も「口角上げすぎ」が誰なのかようやくわかってスッキリしました。

ラジオドラマの脚本も素晴らしかったです。大阪から東京に出て行った彼方さんを主人公に、一人の女性の魂の成長物語の一面もあり、無茶苦茶ドラマチックでした。そして、そんな彼方さんを受けとめ、浮き足たつことなく、どっしりと構えている小田さんのキャラクターも良かったし、台詞の一つひとつに、小田さんらしい切れ味が見事に表現されていました。

この、彼方さんの物語は、阿佐ヶ谷姉妹江里子さんの物語ともシンクロしているかもしれません。

30代半ばからお笑いを始めたということで、江里子さんはどうしたら面白くなれるのか悩むことも多かったそうです。そんな時に、みほさんが「お姉さんは『普通』なんだから」と、頑張りすぎなくていいんだと言ってくれたおかげで、肩から力が抜けて、物事がうまく回り始めるようになったそうです。

これと同じように、彼方さんは、アマチュアとしてM-1の決勝を経験したことを通じて「平凡でいい、いや、平凡がいい」という結論に辿り着いたわけで、阿佐ヶ谷姉妹変ホ長調が見せてくれて、私が惹かれてやまない部分というのは、根底的には同じなのかもしれないなと思いました。

若い頃に「何者でもない自分」が不安でたまらなかったことがある人なら、誰もが共感して、聞いた後には、きっと少し元気になれる、変ホ長調阿佐ヶ谷姉妹も、そんな物語を体現している人たちだと思います。

いつか「大器晩成4」やって欲しいですね。どちらも上品で、面白かわいくて、かなりの毒を持っている。でも、カバーする範囲は被っていません。阿佐ヶ谷姉妹はひっそりと毒を効かせ、変ホ長調は誰よりも楽しげに悪口を言いまくる点で、その個性の表現の形が異なります。そして、阿佐ヶ谷姉妹は主婦的日常あるあるを変奏してみせる内容が多く、どこかファンタジーなところがあるのに対して、変ホ長調のネタは、サラリーマン女子が給湯室や喫茶店で交わしている極めてリアルなやりとりに近いものを見せてくれる。このように、同じで違う2組だからこそ、きっとツーマンをやれば、相乗効果でかなり面白いものになるのではないかと想像しています。

妄想の話は終わりにして。

変ホ長調さん、2023年もマイペースにご活躍中です。

5月には中之島文化祭に出演され、ここで披露した長尺のコントの内容の一部を漫才にギュッと濃縮したもので、9月のTHE W2回戦に挑まれました。その前日。調整のために出られるライブを探していたということで、楽屋Aの劇場メンバーを目指すバトルライブ「口火」にエントリーされました。Wは4分のネタ時間のところ口火は3分なので強制終了されましたが1位を獲得。主催者から「劇場メンバー入れ替え戦に出場」と言われて大変驚いておられる様子を目の前で見ていたのですが、あまりにも「らしく」て笑ってしまいました。M-1のファイナリストになれたことについて「無欲だったから勝てた」と『読む余熱』で書かれていましたが、なんとなく、その一端を目の当たりにしたような気持ちになりました。

そんなことを私が呟いたら、小田さんは「座右の銘は『無欲』です。めちゃくちゃ欲深いです。」とコメントくださったんですけどね。確かに「無欲」と一言で言ってしまうと、ちょっと違うかもしれません。「純粋」のほうが近いかな。「ウケたい」というシンプルで混じりっ気なしの思い一つ。

最近、Podcastもはじめられました。変ホ長調の漫才の素みたいな給湯室トークを合法的に盗み聞きしているような気分になれます。ゆるめのおふざけっぷりが面白くて可愛い。長さも12分とラジオトークと同じくらいで気軽に聴けるので、おすすめしたいです。

変ホ長調ふたりごと

note.com

変ホ長調→にぼしいわし

さて、この、変ホ長調が出演するライブは、にぼしいわしが主催するライブがほとんどでした。変ホ長調を見に行く度に、にぼしいわしの漫才を自然と見るようになったことで、次第に、彼女たちのネタにも、惹かれるようになっていきました。

最初に、にぼしいわしに、お腹が痛くなるくらい笑わされたのは、変ホ長調を初めて生で見ることができた、2021年THE Wの2回戦でした。この年のM-1の予選でも披露されていた定食のネタで、たぶんこの日、一番、笑ったんじゃないかなと思います。

にぼしいわしについては、2019年、2020年のTHE W決勝はテレビで観ていたのですが、正直、印象に残っていなかったのです。でも、この定食の漫才で、一気に印象が変わったし、変わってからは、ほぼ全てのネタが面白く感じるようになりました。

にぼしいわしの漫才は、私の脳内には1ミリたりとも存在したことのないようなものを見せられているというワクワク感があります。ボケとして摩訶不思議な物語を語るにぼしさんの、特徴的な声質と、耳を傾けたくなるような語り口調そして見ていて引き込まれざるを得ない表情は、一人芝居を観ているようでもあり、ものすごい引力があります。

どなたかがおっしゃっていたことですが、漫才師の人柄や個性が認知されることで、ネタで笑ってもらいやすくなるそうです。ひょっとしたら、あの定食の漫才で、私は、にぼしいわしから名刺を受け取ったのかもしれません。そして、私は受け取り損ねたけれども、THE W 決勝の「うんてい」の漫才で名刺を受け取った人もいただろうと思っています。
どのタイミングで差し出された名刺に気づくことができるかは運命です。そして、名刺を受け取った人全員と、お付き合いが続くかといえば、そうではありません。名刺入れが分厚くなっていっても、その全員とお付き合いするようになるわけではないわけです。これは相性であり、日々、動向を気にかけて、よくご連絡するようになる方は、ほんの数人なのです。だから、私は、にぼしいわしに「落ちる」ということはなかったけれど、知り合って何回もお会いする中で、相性の良さを感じ、親愛の感情を深めてきたという感じだと思います。

そんなわけで、いつの間にか、変ホ長調の出演がない時でも、にぼしいわしが出演するライブに、時々、足を運ぶようになりました。そして、にぼしいわしを見るうちに、東西のフリー芸人さんや、大阪の吉本以外の芸人さんのお笑いにも触れるようになりました。

お笑いファンとして、阿佐ヶ谷姉妹によって、この世に産み落とされた私は、いわしさんが企画主催するライブを通じて、多種多様なお笑いを吸収して、赤ちゃんからすくすくと成長していったようなものであり、私は、にぼしいわしのことを、勝手に「育ての親」だと思っていたりもします。

にぼしいわしの引き出しの多さ

にぼしいわしは、ライブの本数が多いだけでなく、驚くくらい、精力的にインターネットでの発信を行っていますので、その魅力に触れる入口が本当にたくさんあります。

niboshiiwashi.localinfo.jp

TwitterInstagramもマメに更新されていますし、お二人ともnoteを書かれています。いわしさんのnoteは毎日更新です。YouTubeでは、1週間を振り返るトーク配信を毎週行うだけでなく、面白い企画動画やネタ動画を次々と上げておられます。Podcastで聴けるラジオ番組も週1回。毎日更新されるにぼしさんの一分間Radiotalk、Artistspoken、さらにファンクラブでのグループチャットや、ゲリラ配信など、コアなファンを魅了する濃いコミュニケーションも欠かしません。2023年にはうまい棒チャンネルのMCに抜擢され全国の駄菓子屋を回ったり、テレビ大阪の喫茶店の番組に出演したりと、映像のお仕事も増えました。ロケでのお仕事ぶりも見ていて安心感があり、今後、チャンスさえあれば、すぐにでも、朝やお昼のロケ番組で活躍されそうな気がします。外見もどんどん垢抜けてきて、ハードコアチョコレートのモデルのお仕事も舞い込みました。小柄なお二人のTシャツ姿はとてもキュートです。

この記事を最初に書いた10ヶ月前からさらにお仕事も増えたので、全部拾いきれているかも自信がありません。とにかく、ますます精力的にお仕事をされていて、素晴らしいなと思っています。

これだけ活発に活動をされていますので、私も、とても全部は追いかけられていないのですが、一つでも、ハマるコンテンツがあれば、彼女たちの人柄の良さが分かるような気がしています。

例えば、私は、いわしさんの書くものが好きで、noteのマガジンを定期購読していますが、読むたびに、いわしさんに共感を覚え、応援したくなります。私の場合、このnoteを遡って読んでいったことで、にぼしいわしを好きだという気持ちが、どんどん大きくなっていったように感じています。

また、お二人とも、驚くほど、多才です。
にぼしさんは、イラストや手芸や工作が得意で、第3回単独ライブ「超!ネックル危機一髪」のフライヤーは切り絵でデザインされていました。その原画が、ライブ会場に展示されていて、近くで見ることができたのですが、とてもセンスが良くて、手先が器用な方だなと思いました。大阪では、何度かフリーマーケットを主催され、にぼしさんから直接、作品を買うことができたのも楽しい思い出です。一点ものの箸置きは、ちょっと面白くて可愛いですし、手描きの絵葉書は童話の表紙のようです。

lp.p.pia.jp

音楽面でも才能を発揮されています。単独ライブで使われている音楽は、いわしさんが作曲しているそうですし、漫才「カービィ」で披露されている歌声も、とても綺麗です。この漫才、ネタとしても面白くて大好きなのですが、いわしさんの歌も好きで、何度も見てしまう動画です。

本当に引き出しが多くて、いろんな形でファンを楽しませてくれる芸人さんです。これからも目が離せないだろうなと思っています。

 

当初このテキストを書いた2023年1月には想像もしていませんでしたが、2023年9月末、にぼしいわしは東京に進出しました。この半年は本当に色んな思い出があって、私の、にぼしいわしへの愛も随分と深まったなと思います。彼女たちにたくさんのものを与えられ、たくさん感情を揺さぶられてきました。これから、彼女たちは、階段を着実にのぼっていくだけだと思っています。その道のりを、見守っていきたいと思っています。そして、これからも、いわしさんが企画に関わっておられるライブを通じて、色んなお笑いを吸収し、私の人生をもっと楽しいものにしていきたいです。